2021年10月09日

恐怖回廊⑦~食事の相手は~

「もうこんな時間か」
「21時過ぎてんだな、早いな。もう2時間くらい経つぜ」
「だな、そろそろ客も減って来たし」
自然と二人の声は絞られた。
日曜日のファミレス。時刻も21時を過ぎれば人もまばらになる。
真鍋は会話を切りコーヒーを口に運んだ。
友人の中山はふと外を見ている。
だが次の瞬間、外を見ていた中山の表情が一変した。
何故か中山は対面にいる真鍋のほうを見ながら恐れ戦いている。
「おい、どうしたんだよ」
「お前、店入るときお前の後ろの席見たか?」
中山はそう聞いてきた。
確か母娘連れで母親が頼んでいたパスタが美味そうだからって真鍋も同じものを頼んだのだ。
「子連れだろ?」
真鍋はそう答えた。

すると中山は真鍋を自分の隣に来るように指示しこう言った。
真鍋は訝しげながらも移動してみた。

「いや、母親一人だ。さっきから子供の声がしないのおかしいだろ!」
「ああ、そう言えば・・・」
「見てみろ、ここからなら見える」
そう言うと中山は窓を指さした。

窓は内側の映像を反射しているため
真鍋が座っていた位置の真後ろを場所が窓に反射して見えるようになっていた。
時間的に夜だからこそ見える反射だ。


そこに映った映像を見て真鍋は思わず右手で口を塞いだ。


母親の隣に座っていたのは人形だった。
母親は人形の口に物を運び、楽しそうに一人で喋っている。


だがその表情はあまりにも暗く、陰鬱だった。


END



hisui666 at 08:52│Comments(0) 黒い物語 

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管理人
「裂」(れつ)


都内在住の自己満足物書き。